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  • 株式会社映像設計 代表取締役 神野富三

著作者人格権とはなにか

Updated: Dec 31, 2020


弊社が制作する映像、動画は著作物です。

我々は企業や団体をお客様として、代金をいただき映像・動画を企画し制作しますが、基本的には著作権は私たちに留保され、完成した映像を使って宣伝をしたり放映する権利をお客様に提供しています。

二次利用が多いので予め契約を交わすことも

しかし昨今は、一旦制作した映像・動画をテレビだけでなく、インターネット上でも配信するとか、DVDにして配布するなど、さまざまに二次利用することが多いため、制作を始める前に著作権に関して「譲渡契約」を結ぶことも多くなりました。

ただし、この時注意が必要なのは、その映像に出演したタレントやナレーター、あるいは使用した音楽については、映像を制作したプロダクションがその著作権を保有しているわけではありません。我々プロダクションがお客様に「はいどうぞ」と申し上げることはできないのです。

どうしても著作権が欲しいときは

それら出演者や権利関係者についても事前に、個別に了解をとっておく必要があります。

もしタレントや音楽プロダクションに無断で、映像制作会社がクライアントに著作権を譲渡する契約をしていたとすれば、映像制作会社だけなくクライアントも著作権法違反で訴えられることがありますのでご注意下さい。

煮たり焼いたりしては・・・

ところで、著作権を買い取ったのだから、その作品を煮て食べようと焼いて食べようと、切り刻んでしまおうと自由だ!と考えるのは、実は違法です。

こうしたことにはまた別な権利が絡んできます。

著作者人格権というものがあります

公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの総称で、それぞれの呼び名が示す通り、簡単に言えば

・著作物を公表(しない)することに関する権利

・著作者としての名前を表示(しない)することに関する権利

・著作者の意思に反した著作物の改変をさせない権利

思想・感情が詰まっている著作物

著作物には、著作者の思想や感情が盛り込まれているため、意図しない利用の仕方をされた場合、著作者の人格的利益を侵害する恐れがあります。そのため著作者の人格的利益を侵害するような、第三者の著作物の利用を禁止する権利を認めています。

映像制作の請負契約書に「著作権を譲渡する」と書いてあるだけでは、もし無断で改変してしまうなどした場合、著作者の著作者人格権の主張を排除することはできません。

著作者人格権を排除する方法

契約書に「著作者人格権を主張しない」という一文を加えることで、紛争を避けられると考えている法務の専門家がいますが、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」には、著作者人格権は著作権が他者に移転された後も著作者が保有する権利とされており、提訴された場合、必ずしも排除できるとは限らないもののようです。

「人格的利益」

著作物がもつ独特の思想ですよね。

クリエーターという職業をしていると、著作物が自分を離れたあとも自身の分身のように思える・・・あの感情のことだと思います。

勝手に別な用途に用いられたり、切り刻まれたら、身を切るような痛み、人格的侵害を受けた気持ちになることはよくわかります。

ちょっと不思議な権利?

ところで「感情」というものが権利保護の対象として認められていることが、意義深いと同時に「これだけ特別扱い?」というか、ちょっと不思議な印象を持つのは僕だけでしょうか。

一般に著作物とは呼ばれないモノやコトにも、人は自身の思想や感情は深く反映させていると思います。そうしたモノやコトに関しても「モノコト人格権」というのを認めるわけにはいかないだろうか、と思ったりするわけです。

何言ってるんだかわかんない?

モノやコトにも人格はある

会社を立ち上げたり、仕事上のプロジェクトを取りまとめたり、イベントを主宰したり・・・いろんなモノやコトには、必ずキーマンとなって心をくだいた人がいて、その人の思想や感情は深く反映しています。もし「継承者」に、その思想や感情を傷つけられたら、心が痛いですよね。

人格権を振り翳したりしませんのでご安心を

そんなことはどこにでもある、ありふれたフリクションです。もし、そういうところで人格権なんて言い出したら、社会は回っていかないでしょうね。

だから逆に「著作者」だけが人格権で守られている、っていうところが不思議だなと思ったわけです。いえ、ありがたいなと思ったわけです。


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