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  • 株式会社映像設計 代表取締役 神野富三

動画・映像の解像度と尺(時間)の関係性

Updated: Dec 29, 2020


きっかけは以前の上顧客企業からの1本の電話

最近、弊社で制作した20年くらい前の映像作品の原盤(マザーテープ)を探す機会がありました。ある若い方が自社の古い映像をネットで検索していて、弊社のホームページにそれに関連する記事が掲載されているのを見つけてくださり、ぜひ見てみたいと連絡をいただきました。最近では疎遠になってしまっていたお客さん(中部を代表する大企業)ですが、何より僕自身が若い頃に営業も制作も担当していた企業なので、携わった仕事にはどれも思い出深いエピソードがあり、走馬灯のように脳裏を駆け巡ります。

すぐに見つかった原盤テープ

さて、このお客さんの場合、主だった仕事のマザーは保管してあることはわかっていたので、すぐに探索。比較的容易に見つかりました。

スチール棚の奥深くに仕舞われたその頃の原盤はもちろん磁気テープ。BcamSPとかD2というフォーマットで、Bcamは再生するプレーヤーがもうオンボロしかありません。D2は無いし。 古いVTRにテープを掛けるのは非常に危険です。かなりの確率でメカニズムにテープを巻き込み、テープを再生不能にしてしまうからです。

テープ→動画ファイル変換

件のお客さんのマザーをVTRに仕掛けて、あれこれ機器を数珠繋ぎにして現在主流のデジタル動画ファイルに同時変換しながら再生してみると、案の定、テープはノイズだらけ。

おっとっと、この章はテープメディアの劣化の話をするつもりではありませんでした。

変わってしまっていたのはテープだけではなかった

変化していたのは、テープに記録された磁気信号ではなく、映像作品の構成、演出手法が今の時代はまったく異なること。その理由の大きなひとつに気づいたのです。今更ながら。

それは「解像度」 による違い。

結論を先に書くと、それは解像度による映像のつくり方の変化。

解像度=情報量とも言えるのが映像の世界です。

ほんの10年ほど前まで、テレビ放送も含め映像の解像度はドットの数で表すと640×480しかなかったのです。それが今主流のフルハイビジョンでは1,920×1,080ですから、面積の比率で言って

約7倍の情報量差がある昔と今。

我々は詳細な被写体のディテール(面の質感や輪郭によって区切られた内と外の関係、動き等)の表現不足を補う時、カメラを寄ったり引いたり、縦横に動いて詳細を捉え、編集でそれらを時系列に繋いで、ようやく高精細映像と同分量の情報が伝えることができます。

すなわち、今ならフルハイビジョンで10秒で見せられる被写体の映像も、その昔は何倍もの時間を要していたことになります。

さらには、絵(画)で伝わらない情報(時に情感)は、今では過剰とも言われかねないほどの饒舌なナレーション(解説)付きでした。

NTSC(640×480インターレース)がFHDの約1/7の情報量ということを改めて考えてみると、昔は15分程度が主流だったVP(ビデオパッケージ・ビジネス映像・企業映像)の尺が、最近のドウガ(動画)では概ね2、3分程度になっていることと、まんざら相関関係がないわけではないような気もします。

もちろん、過去と現在の企業映像の構成手法や尺の変化は、こうした技術的な面が理由とばかりは言えません。時代のトレンドや映像文化、社会の進化も大きな理由です。

またいくら高精細の画像であっても、人間はそれをすみから隅まで認知するには相応の時間も必要です。

映像が高精細になったことで失われていく映像構成技術、映像表現技術も多いのだなあと思った次第です。


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