映像マンはまずは無知のヴェールを被ってみる

「正義論」を知っていましたか?
先回のブログでポジショントークのことを書きましたが、その対極にある視点での捉え方が、これ「無知のヴェール」という言葉で言い表すことができます。

 

「無知のヴェール」とは、自分と他者の能力や立場に関する知識は全く持っていない状態のこと。「無知のヴェールに覆われる」とは、すなわち相手や事象に関する先入観や感情を抜きにしてものごとを理解することです。

 

この言葉は、20世紀の米国の哲学者ジョン・ボードリー・ロールズという人が「正義論」という著書の中で使った表現だそうです。かなり有名な著書だそうですが、僕は最近この言葉を知り、感激と言うかちょっとした感動を味わいました。「おお、うまく言ってくれた!」と。

 

ちょっと適用分野が違いますが

B2Bの映像を企画するということは、僕らが見ず知らずのクライアントが、見ず知らずの対象者に対して、それまで知らなかった技術や概念を伝えるという役割を担うことです。

この時どうしても邪魔になるのが、初めて知る企業や初めて知る人たち(対象者)の趣味性向、初めて知った技術や概念を「先入観の目」で捉えてしまうことです。

これらの「思い込み」は、普通は生活の中で得る新しい情報によって緩やかに正されていくのですが、ビジネスとなれば最初から排除してかからないと、短い制作期間では正確な理解には至りません。

 

「正確な理解」なしに映像は作ってはいけない

偏りの無い公平な事実把握と評価を「正確な理解」とするならば、正確な理解無しに制作した映像作品は、偏見に偏ってしまう可能性大。映像というのは、そういう偏りを増幅させてしまう恐ろしいものです。

 

B2B映像制作のヒアリング基本姿勢

僕は頭の中を急速にバキュームして、先入観(近いだろうと思いこんでいる事象に関する価値観)を空にしてクライアントに向かいます。もちろん社会人として、オーバーフィフティーズとしての常識的な知識は捨ててはいけません。その「評価」だけを捨てて、ニュートラルな立場でクライアントから情報を聞き出すのです。

こうしないと、クライアントはまず僕の(クライアントからみて)歪んだ価値観を否定するところから始めないといけませんし、先入観というのはなかなか頭を離れませんから、ヒアリングが終わっても、結局クライアントの伝えたかったことを理解できないことになりかねません。「無知のヴェール」とは、インタビュアーに必要な基本姿勢かも知れません。

 

感情を抜きにするのが得意

話は飛躍しますが、人の「価値観」「評価」という思想には必ず「正しい」「間違っている」という自分の立場が紐付いていて、さらには「好き」「嫌い」という感情がつながっています。ですから「無知のヴェール」を被ることは実は容易ではありません。

でも、僕ら映像を企画する人間は、その訓練を日常的に行っているため、むしろ日常的に無知のヴェールを被って生活しているようなものです。

 

映画監督がコメンテーターになるわけ

もちろん被っているだけですので、自分の価値観や感情が無いわけではありません。むしろ強く持っている方かも知れません。

よく映画監督やプロデューサーが新聞やテレビでコメントを求められることがありますが、あれは彼らが大所高所にたった意見を言ってくれることを期待していることもありますが、むしろ大所高所に立った上で意図的にある角度に寄った意見を吐いてくれることを期待しているようにも思います。

それはやはり、映像制作者というのが、視聴者が何を言ったら喜ぶとか、怒るとかをよく知っているからなんでしょうね。
 

Alfred Joseph Hitchcock ※本記事にはあんまり関係ありません

 

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