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  • Writer's pictureTomizo Jinno

映像制作案件の競争入札の問題点①

Updated: Jun 8, 2022

競争入札

映像制作業界でも、市町村やお国の機関が企画する映像ソフトの「競争入札」というのがあります。最近はプロポーザル方式が多く、企画案と仕様書、見積書の提出が必要。お役所側からは10ページ以上にわたる様々な指定事項、お約束事項の説明書きがあるけれど、肝心の企画に関する記述はせいぜい1、2ページしかない。つまり提案を考える方は、非常に幅の広い的に向かって矢を撃たなければならず、気持ちとしては「当たったらみっけもの」くらいです。

今日はほかにもある、この競争入札に関する問題点を挙げてみます。


①ソフトウエアの入札金額は「どんぶり勘定」になる

当てずっぽの企画ではあっても、見積書は精細に書かなくてはならないので、仮想のシナリオ、仮想の絵コンテ、仮想の仕様書を作成して、それに沿って見積書を作成することになります。撮影先の数や場所、条件もわからないのに、「まあ、こんなもんだろ」と経験と勘で仕様設定して、積算するのです。

これが道路工事や河岸工事ならば、発注機関側で設計図をつくり、部材や工法も指定して仕様書を出してくるので、工事請負企業は公平な価格競争入札が可能です。しかし、映像やコンピュータなどのソフトウエアの制作は、発注機関にそうした書類をつくることができる専門家はいません。そのため、入札業者側が仮想的に設計図も仕様書もつくり、見積書もつくっているのです。そもそも土俵(設計図)がみんな異なるのだから、価格競争してもあんまり意味がないですよね?

だから、現実的には仕様が違っている企画案と見積書を見比べて、「なんとなくこっちがお得そうだね」と落札業者が決まり、発注先を決めてから再度正式な仕様設計に入るのです。つまり、入札時の仕様書、見積書は「どんぶり勘定」。どんぶり勘定で競争するのって、けっこう虚しいのです。


②発注したあとで企画の練り直し、仕様設計(変更)

「ここをああしてほしい」「そこはこうして欲しい」という注文は、受注後にやってきます。提案時の企画案の絵コンテやシナリオは、お客さん側では読み込んでも理解できないことも多いし、ソフトウエアの設計図というものは、主観で読み取り方が違ってしまうことも避けられないからです。だから、初回打ち合わせ時にプロデューサーなりディレクターから説明を受けて、初めて納得がいき「では、こうしてください」と変更が入る。変更が入れば仕様も変るので、見積書も変るけれど、行政機関の予算システムは、そう簡単に追加予算は出てこない。だから、どんぶり勘定で予め多めに見積もってあるのです。


③企画も仕様設計もタダ

日本のお役所関係の映像制作案件の入札で、企画プレゼンを有償で行っているケースを僕は知りません。考えてもみて欲しいのですが、映像のシナリオ、絵コンテ、仕様書をつくるという作業が終れば、後は制作に入るばかりの段階ということ。製作工程の3−4割が終わっていることになります。その労力、作業は少なく見積もっても30万円以上です。それでも応札する業者が一定以上あるのは、公共事業の仕事をしていることで信用がつくから、でしょう。


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