Tomizo Jinno
B2B映像の「シナリオ」とは(その3)
Updated: Jun 28
絵コンテはスタッフのためのもの
そもそも、絵コンテというのは、実は演出家(ディレクター)がカメラマンや照明マン、ADなどのスタッフと撮影する画像のイメージを共有するための「手段」として、専門知識をもっていることを前提とした表現物です。たった1シーンでもカメラ割り、カット割りによっては、何ページも費やさないと、編集後のシーンの全体像は表現しきれません。
提出物としての「絵コンテ」は異なる
クライアントに提案する「絵コンテシナリオ」を、こうした本物の絵コンテに替えたら、たぶん「もっとコマ数減らして!」と言われるに違いありません。
それ以前の問題として、映像の流れ(カット割りや効果)が完全のわかる絵コンテを、撮影前に作成するということは、実際の撮影は完全にその通り進めることができる・・・という前提が必要となり、企業映像の撮影現場の現実(時間の制約、予定の変更に臨機応変な対応を求められる)では実現不可能なことです。全シーン絵コンテ作成というのは、数千万円、数億円の予算を掛けて撮影するCMや映画の世界の話なのです。
映像の文法・文章の文法
映像の文法は文章の文法の逆であることが多々あります。
映像はまず結論を提示して、説明に入る場合が多いです。その方が視聴者を引きつけやすいからです。
ところがシナリオの文章で読んでいくと、この逆転している感じが、むしろ論理的でないように感じて、クライアントに「ここ直してください」と言われることが、多々あります。
絵コンテシナリオでは表現できない
昨日のトピックスで「マルチな情報をうまく調和させて、雰囲気や気分、時には「意味」を醸成し、情報量が多いことが「仇」とならないように、流れの速さや順番の指定も、シナリオが行っています。」と書きましたが、実はクライアントに提出する絵コンテシナリオを読み込んでも、こうしたことがどのように設計されているかは、わからないと思います。
正直に言えば、そのシナリオはディレクターの頭の中にしか無いのです。
いいえ、もっと正直に言えば、ビジネス映像の撮影現場は、ほとんどの場合目論見通りには行きません。想定していた効果も半分くらいは使えなくなります。ですから実際に撮影できた映像を見てから最善、最適な効果を生む編集を考える部分が5割以上なのです。
だから、撮影の現場では、できるかぎりバリエーションを考えて収録しています。
されどシナリオ。
されど絵コンテ。
これだけでクライアントと認識の一致に到るには、不完全。
「クライアントと、事前に制作する映像のイメージを一致させる」
この課題は、この道35年の僕が今も毎日、思案、研究を続けているテーマです。
シナリオの無い映像づくりの時代がきた
デジタル一眼カメラのボケみ映像やアクションカメラ、ドローン、タイムラプスなど、最新の撮影技術を駆使した「かっこいい」ことを第一目的に映像制作を求められる機会も多く、そうした場合はシナリオを提出しない、できないことも多々あります。
こうした案件の進め方については、改めて書こうと思います。
