- 名古屋WEB動画制作所 神野富三
映像制作時の安全フレームの功罪
アタリマエの「安全フレーム」 テレビ(モニター)がブラウン管の時代には、画面の周辺が切れてしまうことは「アタリマエ」として受け止めていて、編集室にある業務用の「マスモニ」のアンダースキャンのボタンを何度も押して、放送(上映)時の構図とフル画面の状態をチェックしながら編集を進めたものだ。
時代は流れ、フルハイビジョン規格の一般普及びモニターの液晶化、フルデジタルの映像制作環境、さらにパソコン環境での編集がアタリマエになった今でも、じつはテレビ放送ではいまだに「安全フレーム90%」というルールは頑なに守られている。
実際には95%くらいでもまず切れないのに。
たしかに液晶モニターになった今でも、メーカーや機種によっては画面周辺が数%隠れてしまうものがあるので、ことテレビ放送向けでは業界が一定のルールを課すのも仕方がないと思う。
でも、僕は思う「どうして?」
フルハイビジョンの画素数1,920×1,080というデータを正確に作成することができる今、どうしてそれを映すハードウェア「モニター」がこの画素数全部をきっちり表現できないの?
液晶板を適当に切り取って、端っこは枠で隠しているから?
製造コストを抑えるために精度を犠牲にしているの?
「全画素を表現できないモニターはフルハイビジョンモニターとは呼ばない」とするのはどうだろう?モニターメーカーが本気になれば(たぶん)出来ることを、どうしてやらないのか?
「あなたはその精度を出すために100万円を払うか?」と訊かれるのか・・?
なんでもハード主導
僕ら映像ソフトウェア業の人間は、どうもハードウェアメーカの思惑や都合で製造された装置を「こういうものだから」と受け止めてきたような気がする。
どうして、この安全フレームのことをやり玉にあげたかというと、今の時代、映像を視聴する画面はテレビモニターではなく、パソコン用の高画素モニターであることが多いから。
デザインを殺してきた「安全フレーム」
この時代に、しっかり安全マージンをとった映像を見ると、どうにも構図・デザインが甘く感じるのだ。逆に、パソコン視聴を前提にした映像をテレビモニター全画面で視聴すると、周辺が切れてしまうのも、面倒な話だ。
テレビ番組制作界のデザイン力が低いのは、実はこの「安全フレーム」が原因なんじゃないか、とさえ僕は思うのだ。
もうこの時代だ。
ソフトウェアの都合で、ハードメーカーがこちらに合わせる、ってことやってくれてもいいんじゃないの?
