- 名古屋WEB動画制作所 管理人 神野富三
ビジネスをPRするための長尺動画コンテンツの制作プロセス
組織としての意志を汲み取るために
ビジネスに資する動画をご発注くださるのは、ほとんどが企業や団体です。
つまり「組織」です。
ですから、 ご発注の窓口になる担当者の方の一存で内容が決められるわけではなく、上司や経営者の方達の意見を盛り込み、工程の節々でコンテンツ案の承認を受ける必要があります。
節々・・・というのは、その節を通過したら手戻りができない、手戻りすると作業工程をやり直す必要が生じ、コストと工期に影響が出ます、という意味で設定されてます。
建築でいえば、実施設計図面が出来上がってから基本設計に戻るような変更が難しいことと同様です。
映像コンテンツを構成する要素
さて、普通、動画は画像と音声によって成り立っています。
画像は概ね「撮影した実写」「作画したイラストやCG、アニメーション」「テロップ(字幕・スーパー)」、 音声は「ナレーション(セリフ)」「音楽」「生音」「効果音」です。
タイトルには「長尺動画コンテンツ」と書きましたが、ここで長尺と想定しているのは、概ね5分を超え、伝えるべき情報量が多く、ある程度論理立てが必要な映像です。
ビジネス映像でいえば一般的に「会社案内」や「学校紹介」のような、情報だけでなく理念をも伝えなくてはならない映像を指しています。
映像は当然ながら「画像が肝心」なのですが、人が画像から受け取る情報や意味、印象は視聴者によって千差万別です。 ですから、ビジネスで動画を制作するというプロジェクトでは、まず第一に関係者が共通認識を持てる「文字・文章」でコミュニケーションを始めるべきだというのが、僕の持論です。
この「文字・文章」をシナリオと言います。
映像コンテンツを構成する要素のうち、文字で表現可能な、ナレーション(セリフ)+テロップ+画像を定義する記述(ト書き)=シナリオです。
シナリオには普通、絵は付きません。 あくまで文字、文章で表現された「書類」です。
画像に関する記述(演劇脚本でいうところのト書き)も文章です。
面倒がらないで!?
「シナリオ」を提案する時に、画像(絵コンテ)も付けてくれればいいじゃない?
と思うと思います。 ここはぜひご理解いただきたいのですが、シナリオ案というのは多い場合、5回から10回くらいの修正を繰り替えします。 建築の設計図はスケッチや平面図、立面図などの基本設計から始まり、施主の承認を経たのちに最終形の、建設業者が見るための実施設計図や仕様書へと進みます。
ご存知の方も多いと思いますが、実施設計図面というのは小さな住宅でも1冊の本になるくらいの枚数があります。 シナリオは設計図だと書きましたが、絵コンテ付きのシナリオは、それを見ればよその映像制作会社でも制作可能になる、つまり建築で言う所の実施設計図面に近いものです。
建築図面を何度も描き直す
その作業を、ご想像いただけるでしょうか。 予算や規模が変われば、建具の寸法も使える資材の質も換えなくてはいけません。 絵コンテを描き込むという作業は、建築設計でいえば部材の選択や建具の設計も計算しながら綿密に行う実施設計図面を描く作業です。
映像制作プロセスの初期段階での提案は、シナリオであってもスケッチに近い、何度も描き直し可能な方法ー基本設計:シナリオーで行わせていただきたい理由がこれです。
この段階で基本的な内容の共通認識、合意を得て、より具体的な後段の工程を関係者がそれを拠り所にしながら可否を判断していきます。
あくまで「ビジネスで」という但し書き付きです。 個人が自分の好みの動画を制作するというプロジェクトならば、製作者とクライアント(個人)の二人が共通認識を得られるならば、方法はなんでも構いません。いきなり絵コンテや写真を見せて「こんな感じでいいですね?」」「うんうん、そんな感じ!」でOKです。
しかし、ビジネスのソリューションを完成させるプロセスを、そのような主観的、感覚的なコミュニケーションでうまく運ぶことは、よほどの長い付き合いで、よほどの信頼をもらっていないと無理です。
ビジネスコミュ二ケーションの基本は言葉
人間が、脳裏で思考、意識、認識したことを外部に取り出し、人に伝えるには言葉が使われます。 画像や形象を創り出すスキルを持っていて、脳裏にある「思考」「意識」「認識」を目に見えるもの、触ることができる物に換えることができたとしても、そこにはすでに作り手の感情が入り込み、事実だけを伝えているわけではありません。
単純化したイラストや画像から想起する、具体的な映像というのは人によって千差万別です。想起する映像に誤差が出ない絵コンテというのは、テレビCMのような「よくあるパターン」を想起する映像企画の場合だけです。
ビジネス映像の制作工程において関係者が共通認識を持つには、クールに割り切った言葉こそが、齟齬の少ないコミュニケーションの基本です。
