- 名古屋WEB 動画制作所管理人
BtoB動画制作受注活動のための作品事例についての苦悩
「これと同じような動画を見せてくれませんか?」
映像の企画を提案すると、多くの場合弊社の過去の実績から、類似の企画でつくった映像を見せてほしい、と言われます。初めての取引であればなおさら、クライアント様のお気持ちとしては、とてもよく分かることです。
「この企画案通りつくるチカラがあるのか?」
と聞きたくなるのは、ごもっともです。
「はい、こちらです!」
そう言ってお観せできれば、そんなスッキリすることは無いのですが、実はそれがそうは行かないのです。最近では「御社の実績でなくてもいいので、この企画に似た動画をネットで探してくれませんか?」とも言われます。
僕も性懲りが無い男なので「あるかも知れないな・・・」なんて思って「わかりました!」と承ってしまうのですが、これが大間違い。やっぱり見つからないのです。
よくある企画
ならば、こうした苦労は無いのだと思うのです。
WEBで一般消費者に広く観せるものなら、類似企画もたくさんあるでしょうが、インナー利用が多く、視聴者層がユニーク(特定のプロフィールを持っている)な、BtoBのための映像制作は大概が完全カスタムメイド。仕様設定が、つくる映像つくる映像ぜんぶ違います。
うまく説明できないできた
この商売30年以上になるのに、この問題に関する明快な説明をできないできたのですが、ここでちょっと冷静に考えてみたいと思います。たぶん、理由はたくさんあると思うので、今日はそのうちのひとつふたつを検討したいと思います。
例えば案件が「技術解説映像の制作」だったとします。
企画にあたり検討し、設定する条件(要件)を列挙すると・・・
(1)視聴対象者(群)は誰か
一般消費者、その商品の所有者、業界関係者、既存取引先、新規営業先、技術者、経営者、営業担当者etc…
これらの種別によってまず、映像の視点、角度設定や掘り下げるべきレベル設定を行います(ほかにもあります)。
(2)視聴するシチュエーションは
テレビ番組、テレビCM,テレビインフォマーシャル、ホームページ、動画共有サイト、SNS、展示会の常設展示(通りすがり視聴)、プレゼンテーション利用、会議時に上映、個別に配布etc…
これらの視聴に臨む態勢やシチュエーションによって、視聴者の知識レベル、予備知識、先入観や期待値が大きく異なるため、表現方法の硬軟、情報量、情報の伝え方を適切に設定する必要があります。
(3)映像素材は何が利用できるのか
物理的に撮影可能なのか、まだカタチが無いので撮影不可能なのか、CADデータは貰えるのか、テクスチャー資料はあるのか、そもそもカタチがないので撮影(画像制作)不能なのか、マル秘技術のため観せられない部分があるのか、手持ちの写真だけで作って欲しいのか、支給する動画素材を使ってほしいのか、社員の顔を撮らないで欲しいのか、商品は取引先にしかないので撮影は最小限にしてほしいのかetc…
作品に使用する動画素材に関しては、それはもう100通り以上の制約、条件設定があるので、実際に撮影したり手に入れられる素材(CG、アニメ制作も含め)で、映像構成(シナリオ)をつくるしかありません。
(4)制作期間(納期)
制作するコンテンツをどのように設計(企画)するかを考える時に、期間中に実現可能なことを考えなくてはならないのは当たり前ですね。納期は1週間なのか1ヶ月なのか、半年なのか・・・。クライアント企業内部での決裁システムやスピードも大きな検討要素です。
(5)ご予算、ほかたくさんの条件
書き始めたら止まらないくらい、たくさんの条件設定の組み合わせでひとつの企画ができあがっていること、ご理解いただけるでしょうか。上記5つの項目にそれぞれ10通りの選択肢があったとして、10の5乗=10万通り。
条件設定がちょっとでも違えば、そのご予算、期間の中で制作可能(かつ最もパフォーマンス高く)な動画の企画の中身は、大きく異なってきます。すなわち類似の作品がなかなか無いこと、ご理解いただけるでしょうか。
これはちょっと刺激的な言い方ですが、類似の作品が容易に出てくるということは、テーマがなんであれ、ターゲットが誰であれ、シチュエーションがどうであれ、同じ企画ばかりで提案しているプロダクションということになります。もちろんその企画がたまたまバッチリはまっていれば、それは最高ですけど、なかなかそうはいきません。
そもそもの問題もある
今問題のしたのは「企画」についてですが、そもそも僕ら制作マンは「企画が似ている=類似作品」なので、例えばテーマ(商材)がハードウェアでもソフトウェアでも「よく似た映像」はあり得ると考えます。構成手法、シナリオ、演出手法が似ていることを「類似」と考えるからです。
しかし、多くのクライアントさんは「同じようなテーマ」を扱った映像のことを「似た映像」と考えるようなのです。つまり表面上の「絵面(えずら)」が似ているか否かが問題なのです。
ここで大きな齟齬が生じてしまうこと、何度も経験しています。
つまり、企画はそっくりでも、表面上似ても似つかぬ映像を観せられたクライアントさんは「うちの仕事(今回の案件)わかってないな」と思ってしまうのです。
こうした不幸な事件が起こらないよう、どう対処していけばいいのか、未だに答えが出ません。
