- 株式会社映像設計 代表取締役プロデューサー 神野富三
映像制作会社を仕切る職能は・・・
Updated: Jan 5, 2021
実績や職能を無視する世代、時代
もうすでにだいぶん前から確信していたことですが、最近その傾向が更にあらゆる社会、場面で強くなってきました。
もともと感じていたことではあったのですが、それを確信したのは15年以上も前、自社の営業部員を採用しようと面接をした時のことです。
「経験なし」でいきなり上司になりたがる
弊社のようなB2Bの映像制作会社は、当時は原則的に継続的な顧客からの仕事で経営していましたから、営業を主として動く社員はいませんでした。しかし、時代の動きは感じていたので、ここはひとつ営業主体、制作を副として動く社員、しかも幹部候補生として既存の社員たちをまとめる(僕の右腕)社員を採用しようと考えて、募集をかけました。
映像制作は経験なくても、センスさえ悪くなければ採用して気長に育てようと考えていました。その時面接した30代半ばの青年は、前職は企画営業の仕事をしていたといいます。なかなか押し出しもよく、こちらの会社の事業内容にも非常に興味を持ったようです。
これはなかなかいいかもと思って話を進めたのですが、面接の最後の最後、彼は言ったのです。待遇として既存社員を束ねるポジション、つまり入社条件として、いきなり会社のNo.2を要求してきたのです。営業部員を欲しいのですから営業成績さえ上げてくれれば給料はいくらでも(なわけないけど)払うつもりでしたが・・・。
唖然としながら毅然と
「ほう頼もしいね。君が彼ら(既存の社員:全員制作マン)から信頼されるようになったら考えよう」と言って、話を終えようとすると彼は
「なぜそんなまどろっこしいことを言うんですか」「あなたは社長なのだから、あなたが決めるだけでしょう?」
「君は企画営業としては能力があるかもしれない。けれどその能力が未知である君が、この会社で10年以上も先輩のスタッフを動かすには、君の能力が認知されなければ無理でしょう?それには最低でも1年は彼らの下で・・・」と僕。
「そんなの、あなたが命令してくれれば社員は僕に付いてくるのが仕事になるはずだ」
「どうやら君は僕の考えとずいぶん違うようだから、採用してもうまく行きそうにないね。悪いがお引き取りください」と僕。
そのあともこの青年はずいぶん食い下がり、帰って行ったと思ったら1時間くらいして電話「あなたの考えは間違っている」
あなたはいきなりプロなのか?
どうして、この時のことを思い出したかというと、最近のビジネス社会、特に人事面での様子を見ていると、若者たちはいきなり肩書きや職名を欲しがる。そして肩書きを手に入れると、もうその道のプロになった気になる。それで仕事がうまくいかないと、それは会社が教えないから悪い、客がバカだから悪いと言う。ように思いませんか?
飛躍しますが、
政治の世界も今や議員になりさせすれば、その日から人を動かせる、社会を変えられると思っているようですね。
こんな簡単なこと、そんなの無理なこと、立場を入れ替えて考えれば簡単に理解できることなのに、と僕は思います。
人は人に支配されること、誰だって好みません。支配されざるを得ないならば、せめて尊敬できる人、やりがいのある仕事と引き換えではないでしょうか。
いくら「それがあなたの仕事だ」と命令したところで、表向きだけ「はいはい」とだけ返すだけで、その仕事は永遠に捗らないに違いありません。
人を動かすには、その人が動く理由が必要
「組織」が人でできていることを忘れてはいけません。
人と人との関係が縦横無尽に掛け合わされて、ひとりひとりの欲望やエゴ、利害が混沌となっているのが組織です。トップだからといって、ぽっと立っただけの人間がその組織を動かせると思ったら大間違いです。
企業組織のピラミッドは上意下達で、誰が上にたっても、下はその命令で動いている。なんていうのは、その企業の体質がそういう処世が最高有利に働くので、みながそう振舞っているだけ。ただ、そんな会社は居さえすれば超高給が約束されているほんの少しの大企業だけです。
役所と呼ばれる職場はこれにはあたらないし、みながそんな高給じゃない。働く動機は結構「志」だったりします。志を持つ者は、命令ではほんとうは動かないのです。
高度に機能する組織とリーダー
志低く、何も考えていない、何もできない人間を何人集めても組織は動かせません。いわんや社会は変えられません。
考え、行動できる、人の役に立つ、そういう人間たちを動かせる、そういう組織の上に立つ資格のある人間はそう多くはありません。
ビジネスでいえば「プロ」は肩書きではなく、実績。
政治であれば、「人間力」こそがリーダーに相応しい。
いずれの世界も、一朝一夕に手に入るものではありません。
ポッと手に入るわけがないのが「立場と実績」
人の上に立つリーダーを選ぶとき。上滑りな言葉や(仮想)悪への攻撃姿勢ではなく、その人が残してきた実績、行動だけを判断基準にしましょう。