• 株式会社映像設計 代表取締役 神野富三

スペックワークをポジショントーク


Spec. Work 最近日本でも一般的になってきたこのスペックワークという言葉。

フルスペルではSpeculative Work つまり、対価がいただけるかどうか未確定、不確定な状態で請け負う仕事のこと。その仕事を請けるのは投機的(=大損するかも)という意味ですね。

カナダの広告代理店がこのスペックワーク撲滅キャンペーンのために制作した映像が話題になりました。

クラウド型クリエイティブ発注サイトでは花盛り

我々の業界では、複数社による競合(企画)プレゼンで、負けた会社にはお金が支払われない場合がこれにあたります。フリーランスのクリエーターが集まるクラウド型の発注サイトでのコンペは、スペックワークの最たるものと言えるでしょう。

気に入らなければ買いません!

簡単に言えば「作ってもらってみて気に入ったら買います」。つまり気に入らなかったらお金は支払いませんよ、という意味ですね。お客様の立場からみれば「どんな映像になるのかわからないのに発注なんかできません!」「商品(映像)を見てから買うのはアタリマエでしょ?」ということです。一理あります。

でも多くのフリーランスクリエーターならびにクリエイティブカンパニーは、こうしたスペックワークに大変疲弊している現実があります。俗に言うブラック◯◯の大きな要因になっています。

商材を買うか労務を買うか

この齟齬は、そもそも我々が扱っている商品(映像)を、「成果物を購入」する取引と見るのか、その制作「業務を外注」する取引と見るかという違いでもあります。つまり目の前にある商材に対価を支払うか、それを創作した労働(時間)に対価を払うか、という取引意識の乖離から来るものではないでしょうか。住宅やオーダーメイドの衣服がそうであるように、お客様の個性(ご要望)に合わせてオリジナル制作する映像は、世界で唯一のものであり、発注されたお客様が買わなければ、よほどのことがない限り他の会社が買ってくれることはありません。

できれば避けたいスペックワーク

組織で制作を行う我々プロダクションは、ご想像のとおりスペックワークはできるだけ避けていかないと、会社が傾いてしまいます。もちろん連戦連勝ならいいですけど、どう頑張っても勝率3割いけば良いほうでしょう。映像の企画コンペの場合、提案書を完成させるまでの作業は膨大で、そこまでで実際の映像制作の仕事の半分は終わったようなものです。これが対価に代わらないと単純感覚的に全社員の労働力の1/3が失われてしまう感じです。フリーランスの場合も、他の仕事で高収益を上げないと立ち行かないでしょう。

これってポジショントーク

こうした立場が替わると意識が替わる論議。最近のよく耳にするようになってきた「ポジショントーク」の一例のように感じます。

僕自身もロゴやマークのデザインなどの開発を考えると、デザイナーにスペックワークで発注したくなる気持ちはよくわかります。ただ、なぜそうしたくなるかを考えてみると、自分がそのデザインに関して明確で充分なコンセプトをオリエンテーションできない場合に、「まあとにかくいろいろ描いてみてよ」と言いたくなることに気付きます。自分自身がまだイメージできない(言葉にならない)ものを他人がつくってドンピシャ!なんて、いくら相手がプロデザイナーだってそんな幸運は稀にしか起こりません。 これこそ立場変われば言うこと変わる(ポジショントーク)ですよね。

すみません!

弊社は原則的にスペックワークはお断りしています。やはりその案件に関する明確なコンセプト、目的やテーマがお客様の会社内部でコンセンサスが取れていない場合が多く、そうすると僕らは「あてずっぽ」で企画を作ることになり、全精力を傾けることができないからです。同時に、スペックワークで失った対価は結局、他のお客様の案件に転嫁することになり、いくらなんでもそんな不誠実はできないからであります。

もちろん上顧客様で継続的にお取引いただいている場合は柔軟に対応していますし、確実にご発注いただける案件であれば、コンセプトが明確でなくても、目的もテーマもいちからご提案申し上げます。ぜひお気軽にお声がけ下さい。 こんな生意気な会社ですが、腰はいたって低い真面目な社員ばかりですので、どうかよろしくお願いします!


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