- 株式会社映像設計 代表取締役 神野富三
ロケの天気は誰のせい?
Updated: Dec 31, 2020
遅まきながら今年初めての台風1号が発生したよう。
梅雨の明けはまだ少し先。
天気の心配はプロデューサーの仕事
この季節はもちろんだけど、一年中を通して天気、とくに雨というのは僕ら映像制作会社にとっては悩みの種です。
ロケの予定を立てた時のプロデューサーは、最高制作責任者としてスケジュール表と天気予報の進捗を睨み合わせて、夜も昼も苦虫を噛み潰しているので、その家族はいい迷惑に違いありません。
贅沢なことに制作する映像のシーンに欲しい天気は必ずしもピー缶の晴天ばかりでなく、雨模様が欲しかったり、朝焼けが欲しかったり・・・。 例えば「雨上がりの夕焼け」なんて撮れる方が珍しいわけで、そんなシーンを描いたシナリオライターは「非常識」でさえありますが、どうしてもそのシーンが無いと成立しない作品ならば、何が何でも撮りあげたいと願うのは、この商売の性でもあります。
お天気のリスクは誰が負うべきか
ところで、劇場映画やテレビ番組ならいざ知らず、B2Bの映像制作(CM含む)においての「お天気リスク」は、いったい誰の責任、誰の負担において担保されるべき事と、思いますか?
そもそも、クライアントにしてみればその映像のシナリオに天気に左右されるシーンを書き込んだは誰?と言いたいでしょう。でも、請け負って制作している私たちにしてみれば、そのシーンを書き込んだシナリオに了解をもらった時点で、天気に関するリスク負担はクライアントに移ったと考えるのが正論です。
ロケの日に雨が予想され、雨ではシーンが成立しない場合、プロデューサーはクライアントに連絡をとり、相談してロケの延期や中止を決断します。
その決定はクライアントの承認を基に行われたので、もしスタッフやロケ先に関するキャンセルフィーが発生する場合は、全額クライアントが負担するものと考えます。
とうのが、建前です。
でも、このキャンセルフィーというのは、なかなか言い出しにくいのが実情。
クライアントにしてみれば「お天気のことを何で責任もたなければいけないの?」という感情もよく理解できます。
さて、そうすると映像制作の現場ではどういうことが起こるかというと・・・。
・そのそも天気リスクがあるシーンをシナリオに書かない。
・少々天気がイメージと違っていても、気にせずに撮ってしまう。
・編集でできるだけ目立たないようにする。
ということにまります。
「ロケで撮りたいなあ」と思っても「いかんいかん、やめておこう」とするのです。
スタッフに天気の責任は無い
ロケに関わるスタッフにしてみれば、天気に関係なく請けられる仕事はいくらでもあるのに、拘束しておきながら雨だからとドタキャンされては堪りませんから、制作会社はそのスタッフのキャンセルフィーを負担しなくてはなりません。
でもクライアントから貰えない。
とすれば、制作会社は持ち出しで利益を減らすことになりますので、そもそもそんな企画を提案しないようにするのが一番得策、となるわけです。
こうしてロケ映像は消えていく
かくして、テレビCMや企業映像からはロケによるビビッドな映像は姿を消し、なんだかやけに青空な海辺や、どうみても晴れてるのに雨が降ったり・・・。有りえないスケールの一本道を、妙にクリアなクルマが疾走していて、それを有りえない視点で捉えていたり・・・。
ロケのリアリティのことを、もう視聴者は忘れてしまったのかも知れませんね。僕はどうみても、CGや編集で作られた世界よりも、少々荒くても一発勝負で撮りあげたロケ映像の方が、未だに何百倍もドキドキするんだけどなあ。
全編ロケの企業PRビデオ、いっかい作ってみたい!
※弊社の映像制作現場では、撮影にロケを組み込むときは、天気に関係なく撮影できる内容と、そうでないものを上手く配分して、臨機応変に香盤表を組み替えることで天気の影響を極力減らし、スタッフの余分な拘束を減らして、クライアントにもスタッフにも、そして制作会社にも喜ばれるトリプルウィンの制作現場を目指して日夜工夫をしています。