- 株式会社映像設計 プロデューサー 神野富三
夢を売る商人
Updated: Dec 29, 2020
A.映像表現は“フィーリング”だから文字では表せない
B.打合せは絵コンテで行うのがアタリマエである
C.今の時代、打合せはネットと電話でなんとかなる
僕はこのいずれもNOと考えている。
まずAとBの論証。 僕たち映像制作業は、言ってみれば映像の商人である。 ところが売り込む時点ではまだその商品は存在しない。 まだ有りもしない商品を相手に信用してもらって商談を成立させ、納品後には必ず見積通りのお金をいただかなくてはならない。もしクライアントに「こんな映像のつもりじゃなかった!」と言われたらオシマイである。
だから最近では事前に「絵コンテ」や「デモ映像」などを提示してクライアントに了解(理解)してもらっている。「そんなのアタリマエでしょう?」と、たぶん若い同業者の人は思いますよね。
でも、映像を定義するのに、この絵コンテやデモ映像を使うと、返って完成映像とギャップが生まれます。手書きの絵コンテや、ネットで拾ったイメージ写真 が最終納品時の完成形を表しているわけではありません。表している、とクライアントを勘違いさせているだけかも知れません。
クライアントを裏切らない
だから、本当にクライアントを裏切らない、いちばんの方法はシナリオに絵コンテやイメージ画像を貼り込まないこと。テキスト(文字)だけのシナリオでク ライアントにGOサインを貰うことです。実は20年くらい前まではTV-CM以外では初回提案時に絵コンテや画像を張り込むなんてことはしませんでした。 提案を受ける側も目を皿にして文字で書かれたシナリオを読み込んだものです。作る側には都合が良かったんですこれが。テキストで定義したカットやシーン は、文字で書かれたその狙い(定義)をはずさなければ「これは違うだろう」とは言われませんから。
映像の世界観を語る力が無い映像マン
でも今の時代、文字シナリオだけでGOサインを貰うことは殆どありません。企業が事案を決済する時にどうしても書類だけで審査されること、文章を読むこ とを面倒と感じる人が増えたこと、極限まで予算効率が求められるようになったことが大きいですが、映像(シナリオ)を提案する側に、シナリオに描きこまれ ている映像の世界観(夢)を語る力が無くなったことも大きいでのではないかと思います。
プロダクションの現実は、受注前からコッソリすでに映像を完成させていて、そこから画像を切り出して提案書に貼っつけているのかも知れません。
ドキッ!