Tomizo Jinno
映像OFF『秋の宵』
秋の夕方、デッキで今一番気に入っているお酒を飲む。
暑かった今年の夏、
儚い夢のように過ぎ去った冒険を思い出し、
頬をなでる風がもう涼しいことに少し寂しさを感じながら
茜色に変わっていく空の下でほんのり酔う。
さっきまで船の修理をしていたヨット乗りたちも
ポツポツと帰ってゆく。
船としばしの別れを惜しむかのように
舫いを確かめたり、何度も振り返り
船への愛しさをにじませながら一人一人帰っていく。
喧騒が去ったマリーナで すれ違うヨット乗りたち、
群れなす事もなく、思い思いに過ごしながらも
心の交流を感じる粋な関係。
誰もが自由。
何者にも従属せず、
わが身ひとつで立っている感覚が心を震わす。
孤独の味は絶品。
身体の奥から「自由であることの感慨が」湧き上がり、
幸せに包まれる。
孤独の味は絶品。
でも味わうには条件がある。