Tomizo Jinno
映像OFF『思った通りにはいかない』
海の上では、予想通りにいかないのはいつもの事。
突然のカミナリで知らない港に逃げ込むことになったり、
潮の加減で全然進めなかったり、
逆に早く着いてしまうことも。
「到着予定」は刻々と変わる。
約束なんて到底できっこない。
前線通過の嵐は、見上げればやって来るのが見えるのに
逃げられない悔しさ!
海の神様は願いを聞いてくれないどころか、
機嫌が悪けりゃ手がつけられない。
知識に体力・根性総動員でも海が相手では勝負にならない。
人に翻弄されるのには腹が立つけど、
相手が海なのだから潔く受け入れる。
パリの紋章に、ラテン語で
「たゆとへども沈まず」という意味の言葉が記されている。
「どんなに悪天候で、舵が壊れても、帆が裂けても
船は沈まない、沈ませない、必ず目的地まで・・・」
それは歴史に翻弄されたパリが数々の苦難を乗り越えてきた不屈の精神を表して居るとのこと。
自分の持てる能力で最善を尽くし/
立ち向かうことができたのなら、
もうそれ以上は考えても仕方ない。
遠くにある一筋の光を思い描きながら、
ただ、ここで耐えて立つ。
相手は格が違う。
敬意を払いつつ、
でも「絶対になぎ倒されない」と唱えながら
歯を食いしばってここに立ち続ける。
「海」は思った通りにはいかない。でもそれもいい。