Tomizo Jinno
映像制作費の見積もりはご予算枠を示した方がお得(その2)
「映像制作はいくらでもできる」
これは大きな誤解であり、同時に大正解です。どうしてかというと、映像制作の見積書は本来、完成させる映像のシナリオや絵コンテ、撮影条件などが仕様として定義されて初めて「積算」できるものだからです。それでは取引先企業の稟議手続きが後先になってしまうので、相互信頼や通例に従って起案段階で「仕様を想定して」積算、見積もりしているのが現実ではありますが。
「撮影1日、ナレーション、テロップあり完成尺5分」
これでは積算の情報としてはあまりに曖昧で「仕様」がわかりません。どこで何を撮影するのか?撮影場所や出演者の手配はどちらが行うのか?天候に左右される撮影内容になるのか?カット編集だけで満足されるのか、技巧を凝らした編集をイメージしているのか?社内で使うだけの動画なのか、広告として洗練された映像を希望しているのか?
という「?」がいっぱい点灯します。
安易に考えるプロダクション
個人で動画制作する駆け出しのフリーランスや、B2B制作に慣れないブライダルビデオのプロダクションであれば「自分(うちのカメラマン)が自社所有のカメラで撮影に行って、自分で編集すれば、ナレータは友人に上手い子がいるから、その子に頼めば安くあげられる」だろう、と考えて「30万円」という見積書を提示するかも知れません。
真剣に考えるプロダクション
実はこの案件の制作内容が、化粧品の広告だったとしたら。
経験と実績のあるプロダクションは、化粧品会社に相応しい洗練された映像を制作するべきだと考えます。それには相応の企画スタッフ、機材、技術スタッフや出演者にも費用が必要です(もちろん、見積もり条件にもう少し情報が書かれていれば、そういう想像はしないかも知れません)。
化粧をするシーンが必要なら出演者も必要です。素人出演者で洗練された映像は無理があります、プロモデルが必要です。またお化粧する場面を綺麗に撮るには、相応のスタジオと、非常に高度な機材、高度な技能を有した技術者が必要です。
安く見積もって「300万円」。かも知れません。
それでも「撮影1日、ナレーション、テロップあり完成尺5分」にはかわりありません。
与件(見積もり条件)をどう読むか
経験値が多いプロダクション、全国区レベルの映像制作を続けているプロダクションほど、品位、完成度の高い映像を完成させるための制作プラン・仕様を想定して、必要になりそうな人材、機材などの費用をはじきだします。
経験値が少ない安易なプロダクションなら、撮影対象が何であれ「撮れる範囲で撮って、ちょちょい編集すればOKでしょ?」と見積もります。
続く
