モーショングラフィッカーはミュージシャン
この動画も、とても「ノリが良い」ですよね。
映像(動画)には「時間」があるので、写真や静止画と違い「リズム」があります。
ミュージックビデオを観るとよくわかるように、実写映像では音楽のリズムに同期させてカットをつなぎ、この編集作業によってリズムを発生させます。(一般に)
いっぽう、今日シェアしたモーショングラフィックス映像も音楽にシンクロして、リズムよく編集していますが、それ以前の作画の時点で、オブジェクトの動き方自体にリズムがついています。
ところで、バンド演奏をやっていると、ベースやドラムの担当者がよく「ノリがいまいち」とか「ノリが悪い」とか言ったり、言われたりします。
楽器を演奏する人ならばわかると思いますが、単純に正確にリズムを刻むだけでは、ノリが出てこないことを体験していますよね。
僕も学生時代はロックバンドでエレクトリックベースを弾いていました。
時にブラスバンドなどの演奏にも参加していましたが、そこで感じるのは「なんかノレないなあ」という感覚。
また、ロックバンドのドラマーは「タメが大事」という言葉もよく口にしました。
「前ノリ」とか「後ノリ」という言葉もありました。
たぶん、こういうことなんだと思います。
クラシック音楽では譜面の1小節に4分音符が4っつあれば、1小説を4分割した時間の幅の、そのまた真ん中が発音する(太鼓を叩いたり、楽器を奏でる時に音を出す出す瞬間)タイミングなのですが、おおかたのロックの演奏は4分音符の幅の後ろの方がタイミングになっていて、つまりそのわずかな遅れが「タメ」として感じられるのだと思います。また、4ビートのジャズ演奏などでは、逆に音符の幅の前の方がタイミングになっていて、なんとなく「突っ込んでいく」気持ち良さを感じる・・・のではないかと。(曲によって前ノリ、後ノリ、どっちが良いか違いがあるので、ここはあまり突っ込まないでネ)。
モーショングラフィックスのオブジェクトの動きを作り出す作業は、まさにこのタメや突っ込みを意図的に作り込む技術とセンスが欠かせない仕事です。
例えば画面に置いた文字の動きひとつにしても、初速と中間速度、キマリ位置に収まる時の速度が全部一緒では絶対にダメ。それではリズムは生まれません。
時には期待を裏切ってシンコペーションしてみたり、三連符を刻んでみたり。テヌート、スタッカート、フェルマータで変化もつけたいものです。
まず、こうした音楽表現を(知識はなくても)体で知っているいる人でなければ、映像でそのリズムを発生させることは無理です。
世にはモーショングラフィックスが氾濫していますが、おおかたが1本調子で終始しておしまいばかり。
今日はいいものを観せていただきました。